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【鹿島戦】安堵と惜別と溢れる想い

2005年11月26日、日本平。
清水エスパルス、Jリーグホーム最終戦。



つらく苦しいJ1残留争いに足を突っ込んで早数ヶ月。
季節は秋を足早に駆け抜け、すっかり冬の様相を呈して
いたが、ようやくこの日、その戦いに終止符が打たれた。

エスパルスは優勝争いでモチベーションが鹿島を相手に、
最低限必要な勝ち点1を上積みし、リーグ戦15位以上の
確定の赤ランプを灯すことに成功したのだ。

   
            ぴかーん


J1リーグ第33節@日本平
清水エスパルス 2-2 鹿島アントラーズ
得点:(清水)31"63"マルキ (鹿)44"野沢、82"深井

清水面子:
GK 西部
DF 市川、青山、和道、山西
MF 澤登(69"浩太)、枝村、輝悦、兵働
FW マルキ、ジェジン(45"西野)


清水エスパルスを愛する誰もが、「J1残留確定」という
この結果にホッと胸を撫で下ろし、安堵したことだろう。

苦しみ抜いた今年こそが、「新生清水エスパルス」への
産みの苦しみの年だったと、後世で言えればいいのだが。
しかし随分と難産なことだ。もうちょっと安産がいいよな。
もう軽く2年は苦しんでる気がするけどな。(´・ω・`)


ともあれ、来年こそはJ1で優勝争いを!…と言っても、
今の時点ではまだ夢物語と笑われるのがオチなんだが、
思えば去年は一緒に残留争いをしていたセレッソが、
現在リーグ首位という現実。そして少なくともこの1年を
戦い抜いたことでチーム力が上がってるであろうことを
鑑みれば、あながち笑い話でもなかったりするかも、よ?

あ、J1の皆様は軽く聞き流しといてくださいな。( ´∀`)



そうそう、今年の日本平参りは全戦終了ってことで、
これで2年連続ホームゲーム皆勤賞達成です。

おめでとう、オレ。お疲れさま、オレ。




【澤登正朗の美学と花道】


「背番号10、MF、変幻自在のスーパープレイ」澤登正朗。

スターティングメンバーの紹介でノボリがコールされた時、
日本平スタジアムを埋めたエスパサポは万雷の拍手で迎え、
鹿サポはありったけのブーイングをピッチに注ぎ込んだ。

相手にとって嫌がられる存在ほど、頼もしい選手はいない。
ノボリはまだ必要とされている。そう思われている時こそが、
ノボリの言う「輝いている時」に他ならない。


ノボリはまだやれる。来年も現役でやっていける。
試合開始直後に放った、ゴールマウスをかするシュート。
マルキのアシストとなった逆サイドへのピンポイントパス。
この日のノボリのプレーを見て、誰もがそう思ったはずだ。

ノボリはまだまだ充分やれるのだ、と。


それでもノボリは、冷静に自分の引き際を見極めていた。
それこそがノボリがこだわる「美学」に他ならない。

ノボリの美学は、今よりなお劣る自分を認められなかった。
自分を必要とされなくなってから去ることなど耐え難かった。
だから引退を決めた。男の引き際を悟ったのだ。

安易にノボリに「まだやれるぞ」などと言ってはいけない。
他の誰でもない、ノボリが自らが決めたことなのだから。




ノボリの勇姿をこの日本平で見る、これが最後の機会だ。
誰もが「日本平に立つ、背番号10・澤登正朗」の姿を、
その眼に、その脳裏に、その心に焼き付けようとしていた。
この日の日本平は、間違いなくノボリが世界の中心だった。


勝つか引き分けで自力でのJ1残留が決まる、大事な鹿島戦。
しかしこの日の清水の選手やサポーターは、残留云々以上に
「ノボリの日本平ラストゲームに泥を塗る訳にはいかない」
という想いが強かったはずだ。ノボリの花道を飾るのだ、と。


久しぶりの先発出場にノボリは奮闘した。
積極的なシュートと絶妙なパスで鹿島に立ち向かっていく。
そんなノボリにエスパルスイレブンも刺激されたのだろうか、
枝村の豪快なミドルシュートがバーに弾かれたところを、
マルキーニョスが冷静に詰めて待望の先制点を挙げる。


前半終了間際というイヤな時間に同点に追い付かれてしまうが、
ノボリ渾身のピンポイントパスが、日本平にもう一度歓喜を生む。
あとはノボリ自身がゴールを決めれば…せめて、鹿島ゴール前で
FKのチャンスがあれば…と期待したが、その願いは叶わなかった。

今のノボリに90分フルタイムのプレーはやはり無理なのか。
ノボリは自ら限界を悟り、交代を申し出ていたのだ。


後半24分、ついにノボリがピッチを去る時間がやってきた。
その時、ゴール裏のみならず、メインスタンドが、バックスタンドが、
1万6千人のスタンディングオベーションがノボリを迎えていた。

交代で入るのは、まるでこの日に間に合わせたかのように
ケガから復帰してきたオレンジレジスタ・杉山浩太。
これはエスパルスの新旧世代交代の瞬間なのか。
それはあまりに感慨深く、試合のことを忘れた一瞬であった。


この交代後、エスパルスは耐える時間が続いたが、一番厄介だと
思っていた鹿島の深井に鮮やかに決められて2-2の同点とされ、
なおも守勢に回る。ここで本来ならば勝ち越し点を狙うべきなのだが、
エスパルスは敢えて勝利へのリスクを冒さず、残留のために必要な
「勝ち点1」を得るための粘りを見せた。

ノボリ自身の、この試合への「かける想い」。
去りゆくノボリへの、みんなの「かける想い」。
その想いが、ギリギリのところでエスパルスを踏ん張らせた。
そんな気がしてならない。


引き分けに終わった瞬間、選手達はピッチに倒れていた。
私は勝った訳でもないのに、思わずガッツポーズを取った。

周囲が「勝てなかった」ことで落ち込み気味だったのに対し、
私は「負けなかった」こと、そしてあれほど追い求めていた
「J1残留」の目的を達したことを、素直に喜んだ。
そして、この激戦を戦い抜いた選手達を素直に称えた。


確かに勝てる試合だった。2度のリードを守りきれなかった。
ノボリの日本平最終戦に勝利を手向けることは叶わなかった。

だが、優勝争いでモチベーションが高かった3位・鹿島相手に、
15位の清水は完全と立ち向かい、「負けなかった」のだ。
そしてチームにとって何より大事な「J1残留」を掴みとった。
それは決して、不満足なことではなかったはずだ。

しかも、マルキーニョスの2点目のゴールは、他でもない
ノボリの、あの芸術的なアシストがあってこそだった。
惜しくもゴールは生まれなかったが、実にノボリらしいあの
美しいピンポイントパスの軌跡を、忘れることはできない。


そう、

ノボリの花道は、ノボリ自らの足で飾られたのだ。



まだ今季は最終節の広島戦と天皇杯が残っているが、
ノボリは残りの試合には出る気はないらしい。

…今だから言えるが、この話は鹿島戦前にすでに私の耳に
漏れ伝わってきていた。自分は天皇杯に出る気はない。
その分、若手にチャンスを与えてやってほしい、と。

ノボリ自身、最初からこの一戦で全てを出し尽くす、
「一試合完全燃焼」の気持ちで臨んでいたのだ。


そして、ノボリは多くの人たちに見送られてピッチを去った。
これ以上、ノボリは何も望むべくモノはないと思ったのだろう。
もし…もし私がノボリの立場でもきっとそうしただろうと思うし、
ノボリの気持ちを慮れば、これは当然の帰結じゃないだろうか。


完全燃焼したノボリに、残り試合などあるはずがない。
これ以上続けろと言うのは、それこそ野暮というものだろう。
それに、それこそ澤登正朗の美学に反するのだろう。


ノボリは、本当に幸せな男だ。
これほど見事な男の引き際は、そうはない。
同い年の男として、本当に誇らしい。


   澤登正朗という選手と、
   同じ時代を共有できてよかった。


心からそう思った。


ありきたりの言葉では伝えきれない程の想いが
溢れてるけれど、だからこそシンプルな言葉で。


エスパルスのために、サポーターのために、
今までありがとう。本当にありがとう。
そして14年間のプロ生活、お疲れ様でした。


いつの日にか、指導者・澤登正朗と、
またこの日本平のピッチで同じ時を共有したい。



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コメント

なんというか・・・うまく言えないのですが、こんなにも愛され、信頼され続けた澤登選手は幸せですね。
そして、こんなにも素晴らしいプレイヤーと出会い、愛し続けて来られた清水サポのみなさんも、幸せですね。

何年経っても、清水と対戦するときの「いちばん嫌なプレイヤー」は間違いなく澤登選手でした。そんな彼がいなくなることに、安堵3割、寂しさ7割。
お疲れ様、ノボリ。どうかお元気で。

投稿: 春 | 2005.12.02 01:06

>春さん
他サポの皆様からも引退を惜しまれる声が多くて、
ノボリがそれだけ素晴らしい選手だったってことを
改めて実感する次第です。

ノボリが清水にいたことも、私たちの誇りです。( ´∀`)

投稿: 橙次郎 | 2005.12.05 01:01

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